虚無日記

ニヒリズム

【真面目】宮沢賢治の読み方

(今回はおそらく真面目なことを書きます)

 

私はかねてより、宮沢賢治の作品を面白いと感じてもらうにはどうしたものかとぼんやりと考えている。

 

というのも、私が幼いころ、宮沢賢治の短編『よだかの星』を読み、胸を打たれる感覚があったのをいまでも覚えているからだ。強く感銘を受けたという感じではないのだが、なんかこう、視力が0.2くらい良くなったような感じがした。

 

当時はその感想をうまく言語化できずにふわふわしていたが、現在に至っても特に言語化に成功したわけではなく、他者に勧める際は「なんかエモいから」と便利な言葉に頼っている。そう、よだかの星はなんかエモい。

 

簡単に説明すると、よだかという醜い鳥が、その名前に使われている鷹や、その他の鳥から酷く虐げられ、最終的に鷹から名前を変えなければ明日殺すと言われる。絶望に伏したよだかはなんやかんやあって星になるみたいな話なんだが、詳しくは是非ググって読んでみて欲しい。本当に10分くらいで読めると思う。

 

さて、この話を面白く読むために必要なスパイスはいくつかある。

ひとつは他の作品を見てみることだ。宮沢賢治は、他に『銀河鉄道の夜』や、詩『雨ニモ負ケズ』などが馴染み深い作品にあると思う。およそ大半の人は、これらを自発的ではなく学校の授業などで触れたはずだ。

国語教育を学んだ時に感じだが、学校の授業でこの本マジでエモいから読んで欲しい!!!!まじで!!!!のスタンスで教壇に立つ人間はいない。それは教育指導要領の真意ではないから。

 

(だから、個人的な感想ではあるが、面白く読みたい時、あまり学校での経験は役に立たない。

読み解きではなくこの文豪なんとなくエモーい!でもよい。)

少し脱線したが、他の作品としたのは宮沢賢治作品はどこか一貫性、確立した思想を感じられるからだ。(作品全部読んだわけじゃないので絶対じゃないけど)

 

それは面白く読むためのスパイス2つ目、作者自身について知ってみるという点にも掛かる。

 

簡単に宮沢賢治を説明すると、岩手県出身の童話作家、詩人であり、生前はそこまで売れていない。頭は良かった。農家を営んだりして結構早めに亡くなってる。

 

かなり岩手愛はあるようで、銀河鉄道の夜では登場人物がジョバンニ、カンパネルラと言った名前にも関わらず、舞台となるイーハトーブは岩手の別名として宮沢賢治が名付けたもの、つまり舞台は岩手、というのは有名な話である。

まずネーミングセンスおしゃれすぎて好き。

 

さらに宮沢賢治の特徴的なところといえば、仏教的な思想や熱心な菜食主義を挙げたい。

 

宮沢賢治の菜食主義には、命の捉え方や、人間観を読み取ることができる。これは、よだかの星の一文にもあるのだが、よだかは鷹に明日殺されてしまうという夜に、小虫や甲虫を食べる。これによだかは酷く心を痛め、悲しむ描写があるのだ。

つまり、簡単にいうと、明日死ぬのに、意味もなく命を奪ってしまったことが悲しかったのである。

 

だからといって、菜食主義を推しているという訳ではない。

これは、宮沢賢治の、「出来るだけ人の役に立ってから死ぬことが何よりもの幸せだ」という人間観からきている。

銀河鉄道の夜では、カムパネルラは同級生の男の子を助けるために命を落とす。宮沢賢治は、彼を何よりもの聖人像として描いたのである。

 

このような点だけ聞くと、道徳の教科書読まされてる?と思うかもしれない。これは、私の説明が下手なだけなので申し訳がない。もう少し掘り下げて上手いこといくかチャレンジしてみる。

 

銀河鉄道の夜は、未刊行の作品だということを存じているだろうか(たしか、いやおそらくそうだったと思う。違ったらすまん)

さらには、詩「雨ニモ負ケズ」も、宮沢賢治の手記にあったもので、作品として公開されたものではないことも知っているだろうか。

 

彼は、銀河鉄道の夜を刊行することなく、この世を去っている。彼自身、死期が近づいていることは察していたことは、色々な文献が明らかにしている。

彼が銀河鉄道の夜を執筆しているとき、常に死の意識がつきまとっていた。また、死が近づいている感覚が鮮明な最中に書かれたのもまた、「雨ニモ負ケズ」であった。

 

雨ニモ負ケズに描かれる人物、また、最後の文章

 

そういうものにわたしはなりたい

 

というのは、死を目前にした人間が渇望した理想であった。

 

発達心理などの文献を読むと、人間が成人した後にアイデンティティを築く上で最も大切なことは、他者の役に立つ、自分が必要な存在だったんだという自負が持てることという旨を見かける。

そのことを宮沢賢治は独自に築き上げ、洗練した思想を作品に注ぎ込んだのだ。

 

死を目前にした人間が、手記に残した「自分宛」のような言葉には、極限に研ぎ澄まされた本音が綴られているだろう。人間の性善説が裏付けられた気にすらなる。

 

要するに、宮沢賢治作品には、様々なところに彼の人間観が散りばめられていて、これをプールに撒かれた短いホースを探すゲームのように見つけることができるのが面白いところ。

 

よだかの星のラストのシーン、空に向かって高く飛んでいく部分などは、宗教的な考えが反映されている〜などと定説した論文なども転がっているか、そんなところまで読んでみるのもなかなか面白い。(ちゃんと読んだわけじゃないから説明できないけど)

 

作者のバックボーンを加味するとかなり深いし、特にそんなことなくても世界観がめっちゃ綺麗でなんといってもエモ!なので、おすすめ。

 

で、後はむかしの文豪とか読みにくそ〜って感じだけど童話作家ってこともあって難しいこと書かないし読みやすい。ここもいいところ。

 

ここまで個人の意見なので違うことがあってもし〜らね!

 

 

以上!